【幼いころのあこがれ】第3話:体育の忘れ物(鉄棒の時間のあやかちゃん)

【シリーズ】幼いころのあこがれ

部屋の窓から見える公園。

ボロアパートの壁は薄く、公園ではしゃぐ子供たちの会話が聞こえる。

どうやら「好きな子はだれか」と話しているようだ。

小学校の高学年にもなれば、異性を意識し、

自分が好きだと認識する子を相手にすると緊張し、普段通りではいられなくなる。

いま、私の視界の中で会話をしている子たちは、低学年だろうか。

そういえば、私も彼らのような年頃にはすでに好きな子がいた。

だが、それは高学年になって抱いたその感情とは異なる。

恥ずかしげもなく、ただなんとなく好きと思っている程度だ。

あの日まではそうだった。

小学2年生のとき。

ある体育の時間では鉄棒に取り組んでいた。

ややぽっちゃり気味の体型だった私は、この手の運動は苦手だった。

友達のなかには何人も逆上がりができる子がいたが、私はせいぜい前回りだけだった。

このころは男女の身体能力に大きな差はない。

女の子の中にも鉄棒ができる子はたくさんいる。

そのひとりがあやかちゃんだった。

あやかちゃんは学校での活動とは別にエアロビクスを習い事としており、

運動神経の良い子だった。

性格も明るくはきはきした子で、多くの友達もいたが、

若干抜けているところもあり、

筆箱や教科書を家に忘れてしまうことは日常茶飯事だった。

この日、あやかちゃんは大好きな体育の授業にも関わらず、

残念なことに体操服を忘れてきてしまった。

体育が始まる前の休み時間、彼女は悔しそうな顔をしていた。

彼女は今日は見学だ。

授業が始まり、3~4人一組で各鉄棒に割り当てられる。

グループ内で順繰りに、クラスのみんなが必死になって鉄棒に取り組む。

私たちのグループには8つある鉄棒のうち、真ん中あたりの鉄棒が割り当てられた。

同じグループの子から「逆上がりくらいやれよ~」と冷やかしをうける。

こっちだって必死にやってるんだ。

でも、できないんだからしょうがないだろう。

私は逆上がりだったが、お前だってひとつ次の技じゃないか。

いつだったか、「鉄棒の技集」的なプリントが配られており、

逆上がりはかなり前半に掲載されていた。

クリアできれば次の技に進める。

成功すればみんな、プリントを見て次の技にチャレンジしていく。

私のいるグループは「逆上がりできるかな?」のグループだった。

授業時間もいよいよ終盤、私は相変わらず逆上がりができない。

チャレンジしては失敗し、グループの列の一番後ろに並びなおす。

これを何度も同じことを繰り返す。

今日はもう無理かもな。

数分前から全力で取り組むふりをしている。

進度の早いグループの近くにいた先生から、急遽集合がかかった。

「はしもとくんたちが、この技まで進んだけど、

 どうなったら成功かわからないとのことです。

 誰かお手本を見せられる人はいますか?」

グループごとに大まかに進度の目安はつく。

はしもとくんのグループがこれから取り組む技までたどりついた人などいるわけがない。

だが、集合の輪から少し外れたところでひとり、手をあげる。

あやかちゃんだ。

あやかちゃんは今日見学となってしまったが、

本来ははしもとくんのグループで活動する予定だった。

あやかちゃんから手があがることは何も不思議ではない。

だが、残念。

あやかちゃんは制服のままだ。

体操服を忘れてさえいなければ、はしもとくんたちも、

あやかちゃんをお手本にますます上達したことだろう。

そんな私の考えをよそに、手をあげたあやかちゃんはそのまま鉄棒に向かった。

先生も最初こそ制止しようとしたが、「

もうしょうがないわね」と、

あやかちゃんの実演を認める。

あやかちゃんは嬉しそうに鉄棒に手をかける。

そのまま、鉄棒にまたがり、からだは空中に浮いている。

その姿勢のまま、あやかちゃんは風車のように鉄棒を軸として回転する。

1周・・・・2周・・・

そのとき、そのあやかちゃんによるお手本を見ていたしほが大きな声をだす。

「まことー、あやかちゃんのパンツ見すぎー」

急遽として、まことくんがやり玉に挙げられる。

「ほんとだー。まことえっちー」

「まことエロ―」

周りの子たちも口々にまことくんを責め立てる。

私も周りに合わせてまことくんを責めたてる。

あやかちゃんが3周ほど回ったところで、やっと先生が

「そんなこと言わないの。まことくんは真面目に学んでるの。

 あやかちゃんもありがとうね。はい、みんな二人に拍手~」

と強引にまとめる。

私は知っていた。

まことくんは至って真面目な男の子だ。

運動神経は良い方ではないが、体育にも一生懸命に取り組む。

そんなまことくんだから、「お手本はちゃんと見なきゃ」という

義務感から、真剣に綾香ちゃんの実演を見ていただけだろう。

小学校に入学したばかりのころ、たまたま近くの席になったことをきっかけに、

私はまことくんと仲良くなっていた。

だから、わかっている。

まことくんはまだ女の子のことをまったく異性として意識していない。

「好きな子だれ~?」という会話をしても、

「好きってどういうこと?」との答えが返ってくるような子だ。

まことくんは本当になにも悪くない。

あやかちゃんのお手本を違う目的で見ていたのは私の方だ。

授業が始まる前、私はあわよくこのまま、

制服のスカートのままであやかちゃんが鉄棒をしないか期待していた。

一度その期待は砕かれたものの、鉄棒の待ち時間には

鉄棒のとなりでしゃがみ込んでいたあやかちゃんのスカート内が見えないかと

チラチラ視線を向けていた。

うまく見えない。

今日はもう無理かもな。

そう思ったときに集合が掛かった。

あやかちゃんの手があがる。

期待が高まる。

あやかちゃんが鉄棒に近づく。

高まった期待が、いよいよ現実にかわる。

鉄棒にまたがろうとするときに、スカートの中がばっちりと見える。

1周・・・・さきほど見えた生地の側面が見える

2周・・・・フロント部分が見える

「まことー、あやかちゃんのパンツ見すぎー」

私は慌ててほかの子たちに口だけは同調しながら、

3周目もしっかりと回転に抵抗できなかったスカートの中に視線を向けていた。

数回にわけて、あやかちゃんはクラス全員に、そのパンツの全貌を披露していた。

実演後、あやかちゃんは恥ずかしがることもなく、普段通りだった。

まだパンチラを恥ずかしいことだと認識はしていないようだったが、

このパンチラをきっかけに、私はあやかちゃんに思いを寄せるようになる。

冒頭で述べたように「なんとなく好き」だったかも知れない。

だが、パンツという性的なことを意識したうえでの「好き」という意味は、

あやかちゃんのことを女性として見ていた証拠だろう。

その後もクラスが変わるまでの間、あやかちゃんのパンツは何度も見せてもらった。

それ以上の衝撃を受けたことについては、また後日しっかり思い出すことにしよう。

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