トリック

パンチラ(単発)小説

「トリックオアトリート!」

玄関を開けると元気な声が飛び込んできた。

インターフォンの画面には小さな背丈の女の子が魔女の帽子をかぶった姿で映っていた。

「はい、どうぞ」

彼女の声に反応して、目線の高さを合わせるためにしゃがみこんで彼女にお菓子を渡す。

目の前にいた可愛い女の子は目を輝かせている。

もう・・・9年目か。自分も歳をとったな。

そんなことを思いながらも、目の前の幼い少女の可愛さに思わず表情が緩む。

「レミちゃん、今年は魔女なんだね?」

「うん、カッコいいでしょ?」

自慢げにマントや杖を見せつけてくる。
その様子は幼い子特有の自慢げな表情も含まれていてとても可愛らしいものだった。

僕からお菓子を受け取った少女はウキウキして玄関から離れていく。
少女の向かう先では、ジーンズと薄手のコートを着た女の子が手招きして待っていた。

ハロウィンというイベントが当たり前になったのはいつの頃だっただろうか。僕が子どもだった頃は子ども会のイベントなんかも存在しなかった。クラスの中でも数名程度しか楽しみにするようなこともなかった。大学生のころにアルバイト先でのカチューシャが初めてのコスプレだった僕にとっては、より馴染みのないことだが、急激な世の移り変わりを表しているイベントなのかも知れないな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

玄関の前で小学1年生くらいの女の子が突然玄関前に現れたのは社会人になって2年目のことだった。

「とりっく おあ・・・なんだっけ?」

住宅街の中にある小さなハイツ。
固定費を抑えたいがために借りていたボロい部屋だ。
ご近所づきあいも無いに等しかった僕は急なことでびっくりした。

「え?」

戸惑う僕を見て、目の前の少女も徐々に困惑していく。

あ、ハロウィンだ!

数秒して気づいた僕は、慌ててキッチンに向かい、適当に置いていたポッキーを1袋を手に取って彼女に渡す。

女の子の顔が明るくなった。

それ以来、10月末になると少女は毎年僕の家を訪ねてくれるようになった。

様子が変わったのは2年前だった。

玄関を開けると目の前にはいつもの少女。

彼女もすっかり大きくなっていたが、その少女の隣りには、彼女をミニチュア版にしたような子がいた。

年の離れた姉妹は同じ格好をしていた。

かぼちゃのようなオレンジのバルーンスカート。

「と・・とでぃく・・・あれ?」

数年前のお姉ちゃんと同じようにつまづく4歳くらいの女の子。その隣でお姉ちゃんが小声でセリフを耳打ちする。

「とりくおあとりーと!」

「はい、よく言えましたねー」

数年前に“妹が生まれた”と聞いていた僕は“もしかしたら”と思い、毎年予め2人分のお菓子を準備していた。

やっとこの子にも渡せる。
気がつけばこの子たちにお菓子を渡すのは、僕の中でも楽しみなイベントになっていた。

妹の目線の高さに合わせるためにしゃがみこんだ。

「はい、どうぞ。お名前は?」

「レミ」

「レミちゃんかー。はじめまして。かぼちゃさん可愛いね」

レミちゃんは喜んでお菓子を受け取りながら、シュシュや靴下など細かいことも自慢してくる。

気がつけば僕に合わせてお姉ちゃんもしゃがみ込んでいる。
自慢げに話をする妹を愛おしそうな目で見守っている。
お姉ちゃんであるマミちゃんが初めて我が家を訪ねてから7年目のことだった。
当時幼稚園児だったマミちゃんももう小学6年生だ。
少し大人になったマミちゃんはコスプレが恥ずかしい年頃になったようで照れたような表情だった。

お菓子を受け取り、衣装の自慢を終えたレミちゃんが満足した表情を見せる。

「じゃあ、行こっか」

マミちゃんが立ち上がりレミちゃんの手を引く。

「はーい、気をつけてね・・・」

振り返った二人の姿。

妹のレミちゃんは来た時と同じだったが、姉のマミちゃんは違った。

かぼちゃをイメージしたオレンジのバルーンスカートはしゃがみ込むときにその裾をお尻に引っ掛けていたのか、ずり上がっている。

ハイツの廊下に設置された蛍光灯の薄暗い明かりが、ずり上がったスカートの中にある布を照らす。

しゃがみ込んだことで自らのスカートに掛けたトリックは、パンツ丸見えという結果を生んだ。

「マミちゃん、ストップ!!」

「え?」

身体は向こうを向いたまま、首だけ僕の方に向けていた。
お尻には相変わらず白とグレーのボーダーパンツが丸見えとなっている。

「スカート!捲れてるよ」

僕の言葉に慌ててマミちゃんが反応してスカートを正す。

「・・・・あ・・・ありがとう・・・ございます・・・あの・・・・忘れてください!」

急ぎ足でアパートから去っていく二人。

マミちゃんが初めて僕に敬語を使ってくれた。

それも印象深かったからか、二人が帰宅したあと、マミちゃんの柔らかそうなパンツが頭から離れなかった。

まさかアラサーにして・・・

マミちゃんは・・・

小学生なのに・・・・

マミちゃんのトリックにより、僕の右手は膨らんだ股間をさすっていた。

「あの・・・」

翌日。
仕事から帰宅した僕の部屋の前にマミちゃんがいた。塾の帰りに寄ってくれたようだ。

「あの・・・昨日はありがとうございました。 おかげで・・・他の人に見られずに済みました」

「いや、こちらこそごめんね。あのあとデリカシーなかったなって反省してたから」

「そんな、反省だなんて・・・。 わたし・・・・タケさんなら見られても・・・」

「・・・え?」

「いえ・・・なんでもないです」

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あのやりとりから2年が経った。

レミちゃんのお菓子を持っていない方の手をマミちゃんが握る。

マミちゃんは中学生になった昨年からコスプレをやめて、レミちゃんの付き添いに専念するようになった。

玄関を開けてくれた近隣の方に会釈をして保護者のように佇む。

どこの家庭の前でもそのようにしていた。

でも・・・

「ただいまー」

ハロウィンの翌日。

玄関のカギが開いた音に続いて可愛い声が聞こえてきた。塾帰りのマミちゃんは、いつもウチに寄ってから帰宅する。
この部屋の合いカギは常に財布の中に入っているようだ。

「今日さ~、学校であゆみがね~」

聞いてもいない話を始める彼女は2年前までは玄関までしか来れなかった部屋の中でくつろいで過ごしている。

中学の制服姿のままだらしなく座った彼女。

スカートの奥にはグレーの綿生地に小さな黒い星が散らばるパンツが見えていた。

「ねぇ?聞いてる?」

少しむすっとした彼女。

だが、僕の視線の方向に気づくといたずらな笑みをこぼす。

「タケさんはあいかわらずだな~」

成長した彼女と変わらない僕。

気がつけば彼女の掌の上に僕はいた。

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