あかねとみどり~庭の記憶~

おもらし小説

※本物語は以下の続編となります。

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披露宴で僕が座った席は、美鳥ちゃんの隣りだった。
本当なら友人席に案内されるのだろうが、その席には茜ちゃんの高校時代や大学時代の女性の友人が座っている。
幼馴染の中でも招待されたのは僕だけのようで、親族席に座らせてもらっていた。

披露宴は和やかなムードで進む。

茜ちゃんの化粧直しの時間。
司会者の「しばしご歓談を」の言葉を合図に、友人席に座っていた女の子たちはスイーツバイキングに夢中へ直行していた。
僕にも出会いはあるかもと期待して列席したが、女の子たちは男性陣よりもケーキに夢中だった。

化粧直しを終えた新郎新婦が再入場する。
茜ちゃんのドレスは先ほどまでの真っ白なウエディングドレスは水色の華やかなドレスに変わっていた。

「きれい・・・」

僕の隣りで、美鳥ちゃんがぽつんとつぶやいた。
歓談時間中にまだ1歳の娘さんのオムツを交換し、ぎりぎりに戻ってきた美鳥ちゃんが微笑みながら妹の晴れの姿を眺めている。

あれは・・・僕が5年生の冬の頃だった。

いつものように家を出た僕は、茜ちゃんの家の前で彼女が出てくるのを待っていた。
姉の美鳥ちゃんは中学生になっていて、陽介くんや雄太くんはご家庭の事情でお引越しをしていたので、そのころには僕と茜ちゃんのふたりで登校していた。

その日は待っても待っても茜ちゃんは玄関から出てこなかった。
しばらく待っていると、庭の方から声が聞こえてきた。

「お母さん、そこに干さないで」

「干さないと乾かないでしょ。お布団が悪くなるでしょ。あんたがいい年しておねしょなんてするからしょうがないの!」

・・・え?

おねしょ?

いまの声は紛れもなく茜ちゃんだ。
僕のひとつ年下の茜ちゃんは4年生。
そんな年にもなっておねしょしちゃったの?

「・・・まったく。美鳥だって3年生の11月にはおねしょは治ったのよ。寝る前にちゃんとトイレに行きなさい」

「だって・・・・」

なんだって?
かっこよくて頼りがいのあるあの美鳥ちゃんも僕と出会う数か月前までおねしょしてたのか?

「お母さんも今日は仕事だから、学校から帰ったら布団とかパンツとかパジャマとかちゃんと取り込んどくのよ」

衝撃的な会話は、誰にも聞かれていないことを前提とされているようだった。

「おそくなってごめーん」

数分後、いつものように元気に茜ちゃんが玄関から出てきた。

「待った?」

「いや・・・」

先ほどの会話を聞いていないふりをするためには、そう答えるしかなかった。

放課後。
帰宅した僕は急いで隣りの茜ちゃんの家を訪ねた。
インターフォンを鳴らす。

「あれ、タクくんどうしたの?」

玄関から顔を出したのは美鳥ちゃんだった。
今年から中学生になった美鳥ちゃんは隣町の私立中学に通っている。
僕らとはもう行動パターンが違う。
今日はお休みだったのかな?そんなことを思っていた。

「茜ちゃんと遊ぼうと思って・・・」

「そうなんだ。でもごめんね。茜はまだ帰って来てないの」

「そっか・・・。家で待っててもいい?」

一瞬、美鳥ちゃんの顔が引きつったように見えた。

「えっと・・・私は宿題があるから・・・リビングで良い?」

「うん」

「じゃあ、しばらくここで待っててね」

僕にそう告げた美鳥ちゃんは、簡単に部屋を片づけたのか、数分間僕を玄関に待たせたのちにリビングに案内してくれた。
そしてリビングを出て廊下を挟んだ目の前にある自分の部屋に戻っていった。

この日、僕たち5・6年生は芸術鑑賞会のために訪れていた市民会館から直接帰宅している。4年生はまだ授業をやっている時間のため茜ちゃんが帰ってきていないのは知っていた。

通されたリビングの窓。
そのすぐ外にある庭に布団が干されている。
もちろん思い出されるのは今朝聞こえてきた母娘の会話。

近くで・・・見てみたい。

美鳥ちゃんに物音が聞こえないようにそーっとリビングの大きな窓を開ける。窓の外にあったサンダルを勝手に拝借して庭に出た。

僕の目の前にある布団は乾いているが、中央には今朝の失敗と思われる黄色い染みが残っている。
そのとなりには水色のパジャマ。
さらにその隣りには昨晩から今朝まで履かれていたであろうパンツが干されていた。

活発なのにスカートを好む茜ちゃんは、これまでに何度もパンチラしてくれた。酷いときは毎日パンチラしたという週もあった。
だが、茜ちゃんのパンツにはバリエーションはない。
これまで見てきたパンツと同様に、干されていたものは真っ白なパンツだった。

それでも履いているのと干されているのでは見る側の受け止め方が違う。
今まで何度も見ていたその白いパンツに初めて触れた。
まだ少し湿っていたが、その柔らかさを知った。
庭の道路側に干された真っ白なパンツに数回触れたのち、リビングに戻ろうとした。

そのとき、布団を挟んだ反対側が視界に入った僕は動きが止まってしまった。
自然と体がその視線の先まで動く。

そこには、この辺で有名な私立中学の制服のスカート。スカートの隣りには体操服と思われる短パン、指定の紺のソックスが干されている。

そして・・・

その隣に淡いピンクの生地に無数の白のハートが印刷されたパンツ。加えて、隣に真っ白なパンツもあった。
真っ白なパンツは腰の部分に「○○中学 保健室」と書かれている。

心臓の音がはっきりわかるほどドキドキしていた。姉の美鳥ちゃんのパンチラも何度か見たことはあった。
妹の茜ちゃんとは対照的に、いちご柄や星柄、水玉模様。可愛らしい模様のあるパンツを美鳥ちゃんは愛用していた。

茜ちゃんは絶対に白しか履かない。
だからこのピンクかつハート柄は絶対に美鳥ちゃんのパンツだ。

それがこのように干されている。

音を立てないようにゆっくりとリビングに戻った僕は、自分の心臓の音が聞こえるほどにドキドキしていた。

♪♪♪~

!?

家の中から急に大きな音が鳴って驚いた。
びっくりして音のする方に向かう。
廊下に出ると、真向いの・・・・美鳥ちゃんの部屋からだった。
美鳥ちゃんの部屋から聞こえた音は、どうやら着信音だったようだ。
扉の向こうから、美鳥ちゃんの声が聞こえる。

「・・・いやだ・・・・行きたくない・・・
 ってか・・・もう、いけないよ・・・・」

時折涙を啜るような音も聞こえてくる。

「・・中学生なのに・・・教室で・・・・・
 ・・・・おもらし・・・行けないよ・・」

ところどころ聞こえなかったが、“教室”と“おもらし”という言葉がはっきりと聞こえてきた。
そして、そのことを決定づけるような啜り泣く声。

やっぱりだ!

美鳥ちゃんは今日、学校の教室でおもらしをしてしまったんだ。
自分のおもらしによって汚れたスカートや靴下、パンチラガードのために履いた短パンと可愛いパンツを洗濯して干していたのだろう。
帰宅して急いでシャワーを浴びたのか。
保健室で借りたであろうパンツも一緒に洗濯して干していたと思われる。

美鳥ちゃん・・・・おもらし・・・

かっこいい美鳥ちゃん

頼れるお姉さんだった美鳥ちゃん・・・・

そんな美鳥ちゃんが・・・僕が幼稚園のころには卒業していたおもらしを・・・・

中学生なのに・・・・

興奮が冷めない僕は、また庭に向かっていた。

道路側を見れば、茜ちゃんのおねしょパンツが・・・

反対側を見れば、美鳥ちゃんのおもらしパンツと保健室パンツが・・・

どれくらいの時間、それらを眺めては触ってと繰り返していたかわからないほど我を忘れていた。

「ちょっと!なにしてんの!!」

急な声に驚いて振り返ると、そこにはランドセルを背負ったままの茜ちゃんがいた。
茜ちゃんの大きな声に何事かと思ったのか、数秒後に美鳥ちゃんが駆けつけてきた。

僕が庭に干されていたパンツを堪能していたのは、何の言い訳もできない状態となってしまった。

まずい。

そう思って焦った。でも、様子は違った。

最初こそ、僕に大きな声を出した茜ちゃんはどんどん顔が赤くなっていき、目に涙が溜まっていく。
駆けつけてきたときには涙目で赤い顔をしていた美鳥ちゃんは、みるみる青ざめていった。

あれ?これって・・・もしかしたら僕の方が有利では?

「ねぇ、これってなに?」

その言葉に合わせて、最初は茜ちゃんに視線を向けた。

「ちがう、なんでもない。天気がいいから干しただけ」

「でも、隣にパジャマもパンツもあるよ。これって・・・」

「ちがうの。なんでもないの」

「おねしょだよね」

「ちがう、おねしょなんてしてない」

「でも、今朝おばさんが“おねしょ”って言って怒ってたじゃん」

「っん!?」

茜ちゃんは反論できなくなってしまった。

「美鳥お姉ちゃん、こっちのは?」

「そ・・・それは・・・・」

「○○中学って書いたパンツもあるよ」

「・・・・学校で・・・おもらし・・・・・しました」

美鳥ちゃんの方は観念するのが早く、早々におもらしを告白した。
となりの茜ちゃんが驚いた顔で美鳥ちゃんを見る。

僕の両サイドには白のおねしょパンツとピンクのおもらしパンツがある。
そして目の前には、今朝おねしょをした茜ちゃんと、今日おもらしをしたみどりちゃん。
おしっこを失敗した姉妹がいる。

「ごめん・・・」

なぜか美鳥ちゃんが僕に謝ると、それに倣ったのか茜ちゃんも

「ごめんなさい」

と謝ってきた。

帰り際、ふたりは僕に

「誰にも言わないで」

と懇願してきた。

「え~・・そうだな・・・じゃあ・・」

どうしてもおねしょ&おもらしを知られたくない姉妹は、僕の条件に従ってくれた。

あのときのことを思い出してしまった。
衣装を変えた茜ちゃんは、列席のみなさんにハニかんだ笑顔を見せる。
僕の隣りに座る美鳥ちゃんは、高砂席に歩みを進める新郎新婦に高そうなカメラを構えて笑顔で何度もシャッターを切る。
この空間であの時のことを思い出しているのは僕だけだろう。
いまは、祝福の時間だ。
僕も笑顔でお祝いしよう。

僕なりに精一杯の笑顔と態度、言葉で茜ちゃんの晴れの日をお祝いできたと思う。

翌日、昼過ぎにひとり暮らしの部屋に戻った。
華やかな結婚式を終えたからだろうか、日もまだ高い時間なのに部屋の中はとても暗く感じた。
1Kの部屋に無造作に置かれた家具。
隅に置かれた小さな衣類棚。
最上段引き出しには通帳や印鑑と一緒に僕が大切にしている写真などの思い出も保管してる。

引き出しから一つの袋を取り出した。

「じゃあ・・・干してるパンツちょうだい」

あのとき、僕の出した条件はここに保管されている。
茜ちゃんの小4時の白いおねしょパンツ

美鳥ちゃんのピンクで白のハートがイラストされた中1時のおもらしパンツ

ふたりとも・・・僕は約束を守っているよ・・・これからも・・・・

久しぶりにこの2枚のパンツとその記憶で、僕は暗い部屋にいる自分を慰めた。

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