脳裏の記憶

パンチラ(単発)小説

厳しい寒波が続いていた。
久しぶりに差し込んだ暖かい日差しは薄く積もった雪を溶かしていく。雪解けは水は道路や公園に太陽光をキラキラと反射する。

あの冬の日もこんな天気だった。
僕の地元は冬に雪が降っても積もることは少ない。だからこそ、物心ついたころから雪遊びをした記憶は鮮明に残っている。それだけ積雪量は少ない地域だ。

小4の冬の日のことだった。
朝、目が覚めると窓から見える景色は一面の白銀世界だった。
通っていた小学校では午前中の授業は急遽すべて中止となり、僕ら子どもたちは全員教室から飛び出してグラウンドに積もった雪で精一杯遊んでいた。
僕らは数少ない雪合戦の機会を満喫し、大人しい女子生徒なんかはどこからか持ってきたお椀を利用して雪ウサギをつくったりもしていた。
雨とは違って固形物だから、僕らはすっかり油断して遊ぶ。雪に慣れていない僕らは、遊び始めて1時間も経過すれば手袋も靴も靴下もビショビショに濡れていた。
午後からは通常通り授業を行ったが、誰もが濡れた靴下を気持ち悪そうにしながら席についていた。

授業が終わり家に帰りついても道路の脇や車の上には雪が大量に残っていた。
帰宅した僕らはランドセルを適当に家の中に放り投げ、すぐに近くの公園に向かった。
校庭での雪遊びでさんざん雪合戦をした僕らは、滑り台に積もっていた雪を丸めて小ぢんまりとした雪だるまを作る。これはこれで楽しかった。雪だるまができあがるころ、公園には近所に住む高学年のお兄さん・お姉さんたちも遊びに来た。
高学年の子たちが揃うなり、近所でボスのような存在だった6年生のアキラ君がかけた号令で、公園内に居た全員での雪合戦がはじまった。学年は違っても小さいころから一緒に遊んできた仲だ。2チームに別れて戦っても、その中には思いやりや協力があった。

雪合戦がひととおり落ち着くと、僕らの身に着けていた衣類はびっしょりと濡れていた。学校で過ごした時間のように手袋や靴下が気持ち悪い。アキラ君なんかはそのあたりを気にしない子だったが、僕は違った。
おそらく、様子が少しおかしかったのだろう。そんな僕に6年生の優実ちゃんが声をかけてくれた。
優実ちゃんは明るくて気の利くお姉さんだった。子ども会のレクリエーションでお菓子をこぼしながら食べる僕のことなんかをよく気にかけてくれて、こぼれたものを拭いてくれたり全員にお菓子が行きわたるように配慮してくれたりと、優しいお姉さんだった。

優実ちゃんはいつもよく愛用していた水色のキュロットを履いていたが、この日はその下に黒いタイツも履いていた。
優実ちゃんに手招きされた僕は、彼女に促されるまま公園の隅に設置された木製のベンチに向かう。雪解けのベンチは暖かい日差しを受けて、乾いたところもあった。

その乾いた場所に腰をかけていた優実ちゃんは立ち上がり、僕をそこに座らせる。
座った僕に差し出されたのは乾いた靴下だった。準備が良く、面倒見のいい優実ちゃんは数枚の靴下を持参していた。

濡れた足元が気持ち悪かった僕は、喜んで差し出された靴下に履き替える。この靴下も、濡れた靴をはいてしまえばすぐに濡れてしまうだろう。それでも履き替えたことでかなり不快感は緩和された。

僕が履き替える様子を見届けた後、今度は優実ちゃんが僕が座っていた場所に座ってタイツの上から重ね履きしていた自分の靴下を履き替えた。たしか“気持ち悪くなるよね~”など言ってくれていたと思う。

そんなことを笑顔で喋りかけてくれる。
でも、僕の視線は優実ちゃんの笑顔には向いていなかった。

靴下を履き替えていた優実ちゃん。
右足だけ体育座りのように膝を折ってベンチの上に乗せている。

僕の視界には、右足の鼠径部・・・キュロットと足の間からその中身が見えていた。

タイツを穿いているが、そのタイツ越しにハッキリと見えていた。

それは白をベースとした生地で、ピンクや青のハート柄のものだった。

“優実ちゃん・・・パンツ、見えてる!”

僕の目は、はっきりと優実ちゃんがタイツ越しに見えるかわいいパンツを捉えていた。

右足を履き替えると、続けて左足を履き替える。

左足をベンチに乗せると今度は赤や黄緑のハートが現れる。

4年生の僕は、教室の中でもたまに見えるクラスメイトのパンツには大して何も思っていなかった。
だが、この日見えた優しくて頼れる6年生である優実ちゃんのパンチラは、僕にはじめての心情をもたらせていた。

雪遊びを楽しんでる最中も、頭の中はハート柄のかわいいパンツが何度も浮かんできた。

遊び疲れた僕は帰宅後、すぐに布団倒れこんだ。

うつ伏せで倒れこんだ僕の頭の中に浮かぶのはやっぱり優実ちゃんのパンチラシーンだった。

あれ?

優実ちゃんのパンチラを思い出していると、ズボン越しではあるが敷布団に接している股間が気持ちよくなってきた。

うつ伏せのまま体を前後・上下・左右に動かすと、股間はさらに気持ちよくなっていく。

あれが僕の人生で初の自慰行為だったのだろう。

体が子どもだったのでもちろん出るものはない。

でも、その日から僕は優実ちゃんのパンツはもちろん、クラスメイトのパンチラが見れた日には、股間に布団を擦るように押し付けるようになった。

あの日から、10年以上の月日が流れた。

大学生となった僕は年末年始の商戦に必死に立ち向かうデパートの入り口で、寒さに凍えながら誘導のアルバイトをしていた。家を出た時にはまだ薄暗かったが、昨晩まで降っていた雪はすっかり止んでいた。

暖かい日差しは、デパートの向かいにある雑居ビルの階段を濡らしていた雪解け水を乾かしていた。

僕と同じくらいの年ごろの女性が、おしゃれな衣服を身に着けてその階段に腰をかけている。

彼女は自分の傍らに購入したばかりの紙袋を置き、帰宅まで待ちきれず購入したものを紙袋から取り出して眺めている。

暖かそうなスカートとタイツ姿で座って戦利品を眺めている女性は、僕の視線にはまったく気が付いていない。

大人になると子供のころのように無邪気に座る人を見かけることは無くなっていく。

久しぶりに見えた女性のスカートの中。

それは、あの時の優実ちゃんのように可愛いパンツではなかった。

ワインレッドのパンツはタイツ越しであっても光沢のある素材であることが認識できる。

それは、かつて僕が眺めていた純粋で可愛らしいパンツではない。

それでも、今丸見えとなっているワインレッドのパンツを、無理やりあの時のハート柄のパンツに脳内変換する。

きれいに化粧をして、おしゃれな服をきた女性。

穿いているのはハート柄のかわいいパンツ・・・・

そんな妄想をフル回転させ、さみしい年の瀬を過ごしている。

来年は、いい年になりますように。

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