迎春

パンチラ(単発)小説

「あけまして、おめでとーございまーす」

炬燵の中で眠りかけていた僕は、つけっ放しにしていたテレビ番組の司会者が放つ大声で目が覚めた。
テンション高く明るく新年を迎えたい。
でも毎年のことだが睡魔に負けてしまう。
新年のスタートがうまくいけば1年間、いい年になりそうな気がする。
でも、今年こそはと思っていたが寝落ちしていた。
今年もいつもと同じような年になるのかな。

時刻はまだ0時2分。
新年早々、ネガティブになっていた。

「あけましておめでとう」

真帆から連絡が来ていた。

「おめでとう。今年もよろしくね」

寝落ちしていたがゆえに冷えていた体を温めなおすため、横になったまま肩まで炬燵布団に潜って返信する。
返信から間もなく隣の部屋から笑っているような声が聞こえてきた。

「あけおめ~」

炬燵のある和室の襖が開かれるとともに、元気な声が聞こえてきた。

「・・・来てたのか」

「30分前くらいからお邪魔してたよ。
 リクが全然起きないからさ~。
 先におばさんに新年の挨拶してたよ~」

リビングの方からは音楽番組の音が漏れ聞こえてくる。同じマンションで上の階に住む真帆。歳は僕よりも一つ下の中学1年生だが、幼馴染ということで僕らの会話には敬語は存在しない。

「ほら、初詣行くよ」

まだ頭がぼーっとしてるうえに、寒さも感じる。もう少し炬燵でしっかり体を温めたい。

「もう少し・・・、
 てか、真帆は寒くないんか?
 そんな格好して」

そもそも初詣に行く約束はしていない。
それでも真帆は最初から僕と一緒に初詣に行くつもりだったのだろう。
タートルネックのセーターを着ているが、下は白いデニムのミニスカート。
見てるこっちが寒くなってくる。
でも、当の本人はそんなこと微塵にも感じていないようだ。

「寒いよ。でも、お正月なんだからさ~。
 ダウンジャケットも着るし~」

僕ら中学生が深夜に外に出ることなんて基本的には許されない。
初詣ならば、と親も許してくれているのだろう。
普段ならばありえないことで、普段から元気な真帆がいつにも増してテンションが高い。

「でも・・・お母さんも行くの?」

自分でも真面目だと思う。
寝起きであるにも関わらず、こういう時でもちゃんと“保護者同伴か否か”というのを気にしてしまう。

「私がついていくよ~」

声のするリビングの方に顔を向けると、襖からひょっこりと香帆ちゃんが顔を出す。
香帆ちゃんは真帆の5歳年上のお姉ちゃんだ。
もうすぐ高校卒業ということもあって、今日は僕らの保護者となってくれるようだ。

「あ、香帆ちゃん・・・・
 あけましておめでとう」

「おめでとう、リクちゃん。
 もう行けそう?」

小さいころからたくさん面倒を見てもらった。優しいお姉さんである香帆ちゃんは、僕にとって初恋の相手だ。
自分でも情けないと思うが、緊張してさきほど真帆に向けたような挨拶と会話ができない。

「もう少し・・・・」

「えぇ~、早く行こうよ」

僕のリアクションに真帆が不服そうなリアクションをする。その声がイチイチ大きいため耳をふさぎたくなる。

「ほぉら、リク、行くよ!」

せっかちな真帆は、僕が枕にしていた座布団に手をかける。

「ちょっと、真帆、やめろよ!」

真帆に引っこ抜かれそうになる座布団を必死で両手で押さえる。

「ほらほら、行くぞ~」

楽しそうに座布団を引っ張る真帆。

さっきよりも力を入れるために、真帆が低い体勢となった。

座布団を奪われないように腕に力を込める。

「きゃっ」

滑らせたのか。
真帆の手が座布団から離れた。

ドスンっ!!

重たい音ともに、真帆が尻もちをついて倒れた。
それまでは横になったままの僕だったが、その大きな音に反応して身を起こして真帆の方を見た。

「あいた~、手ぇ滑っちゃったぁ」

真帆は少し恥ずかしそうに笑っている。
尻もちをついたまま。

その白いデニムミニの裾の口を僕の方に向けたまま。

僕に向けられたスカートの口からは、裾がピンクのゴムになっている白いパンツが見えていた。

その白いパンツには、かわいいアザラシのキャラクターが数匹見かけられる。

アザラシの周りは水玉のような水色の模様も一緒にプリントされている。

幼馴染であるがゆえに、これまでに真帆のパンチラは何度も見たことがあった。

だが、中学生となり日常的に遊ぶことはなくなっていたため、久しぶりのパンチラだった。

真帆・・・・まだこんな可愛いもの穿いていたのか・・・

中学生となった真帆は、顔つきも体つきも少し大人っぽくなっていた。

そんな真帆が、小学生のころから穿いていたような可愛いパンツを穿いている。

「ちょっと、大丈夫?」

「あ、ごめんなさい。
 ちょっとはしゃいじゃって・・・」

僕のお母さんからの呼びかけに返事をしながら、真帆はゆっくりと立ち上がる。

「リク、行くよ」

僕の顔を向きなおした真帆の顔は、楽しそうな笑顔のままだった。

「あと・・・3分待って」

炬燵の中に座りなおした僕。

真帆の可愛いパンチラで反応してしまったものが鎮まるには、少しだけ時間が必要だった。

近所の神社には、想定していたよりも多くの参拝客が訪れていた。寒風に体を震わせながら進んだ賽銭箱まで続く参拝者の列。

離れないように密接した空間では、時より真帆と肩通しが触れ合う。そのたびにドキッとしてしまった。
いままで意識したことはなかった。
でも、今日の僕は違った。
明らかに真帆のことを“女の子”として意識している。
そう実感したのは初めてのことだった。

香帆ちゃんのことは最初から女性として好きだった。
でも・・・・
もしかして僕は真帆のことを・・・・

参拝を終えた帰路。
香帆ちゃんが奢ってくれた温かい甘酒の紙コップを両手で握りながら歩く。

「リクちゃんはどんなお願いをしたの?」

「え?・・良い1年になりますようにって」

「なにそれ~?すごいアバウト」

僕の返答に質問してきた香帆ちゃんも真帆も笑っている。

「なんで笑うんだよ」

「ごめんごめん、もっと具体的な答えがくるかと思ってたから・・・。 真帆は?」

「ん~、私はね・・・・」

少し間が空いた。

「初恋が実りますようにってお願いしたんだ」

真帆は誰とも目を合わさず、少し遠いところを見ているようだ。

無言のまま歩く僕たち。

気が付けば、香帆ちゃんは僕と真帆から少し距離をとっていた。

今年は、いい年になるかもしれない。

いや、真帆とともにいい年にしようと誓った。

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