私はこうなる運命だった

おもらし小説

新型の感染症が落ち着きを見せてきた。
感染症に慣れ、対策も進んだという世論の声や認識は喜ばしいことだ。そのおかげで、これまで私を大切にしてくれた多くの皆様に晴れの姿をお見せできる。

自身の結婚式を1ヶ月後に控える。
大学生の時に知り合った彼は少し忘れっぽいところがあったり、すぐにてんぱったりと、ふたりの今後を考えると不安がないわけではない。でも、私のことを何よりも大切にしてくれているのが常日頃から伝わってくる。だから、私も決心して彼の気持ちを受け止めた。
何よりも、私自身が一生彼とともに過ごしていたいと思っていた。世間ではマリッジブルーという言葉もあるが、こうなる運命なんだと覚悟のようなものが決まっている私には無縁だった。
そう、私と彼は出会う運命だった。
彼が私に惹かれるのは当然だった。

大学2年生のある日。
たまたま参加した飲み会に彼がいた。他の子たちよりも大人しかった私と彼は、飲み会というわずか2時間で急速に仲良くなった。
それから数回のデートを重ね、お付き合いをすることになった。貧乏学生だった彼とのデートはファミレスや一人暮らしをする彼の家で自炊でをすることが当たり前だった。
その貧乏臭さが嫌だという女の子もいると思うが、私には彼がたくましく見えた。
誕生日やクリスマスのプレゼントでは1万円を超えるようなものをもらったこともなかった。
でも、彼は必ず手紙を添えてくれて、毎度のごとく私を泣かせてきた。
そんな彼のことが好きで好きでたまらなかった私が、体を許すのは必然だった。
彼と体を重ねた何度目かのことだった。
ふと気になった私は彼に問いかけた。

「ねぇ、もっとこうして欲しいとかある?」

愛する彼とせっかく体を重ねるのだ。
私ももっと彼には喜んで欲しい。
私の問いかけに対して彼は恥ずかしそうにするだけで答えてくれない。

「わかった!人に言えない変な性癖あるんでしょ?」

いたずらに笑いながら茶化す私だったが、彼はそれまで以上に恥ずかしそうに小さくうなずいた。

「誰にも言わないし・・・私にできそうならやってみるから・・・教えて」

甘えた声で問い詰める私に、彼がとうとう折れた。

「・・・俺、女の子がおしっこ我慢する仕草とか・・・・おもらししちゃうのが好きなんだ」

おもらし?
見た目も性格も普通の男子だと思っていた彼の口から出てきた言葉に驚いた。
いや、協力したいとは思ったけど。
さすがにおしっこを見られるのは・・・・
そう思って戸惑っていたが、彼は徐々に興奮してきたのか、クローゼットから1つの段ボール箱を取り出す。
箱の中には何枚ものアダルトDVDが入っていたが、盤面には「お漏らし」や「失禁」とタイトルに書かれたものばかりだった。

うわっ・・・・こんなに。。。。

今まで知らなかった彼の側面に少し引いてしまった。私のそんな様子に気づいていない彼がお気に入りだという1枚を取り出してセッティングし再生する。

数シーンを一緒に観て

「ねぇ、ドキドキしない?興奮しない?」

と彼が聞いてくる。
正直、まったく興奮しなかったわけではない。いい歳した女性がおもらししてしまう姿。DVDに映るそれが演技だとはわかっているが、大人としてあり得ない失敗をするその姿には、どこか心を奪われるところがあった。
そして、なによりもそれらを昂った様子で観る彼がいたことで、本当に好きなんだなと感じ、受け入れることができていた。

再生を終えた彼に、改めて質問してみた。

「ねぇ、こういうのが好きになるきっかけとかあったの?」

私の問いかけに、彼はスマホを取り出してひとつの動画を再生した。

「なんの流れだったかは覚えてないんだけど、偶然この動画を見つけてさ。
 なんか、この子がすごく可愛く思えて。
映像なのに抱きしめたくなるくらい 興奮しちゃったんだよね」

画面には、下校中の小学生の女の子が映っている。
少女はまだ低学年くらいの幼さがある。
必死で前を押さえ、がに股になりながら早歩きで家までの道のりを急いでいるようだった。
だが、その途中でそのときを迎えてしまった。
少女が履いている短パンの裾から水流のようなものが見える。
そのまま3~5歩ほど歩みを進めた少女だったが、とうとう足が止まってしまう。
少女の手は押さえていた股間から離れ、両方の裾から水が流れ落ちる。
少女は直立不動のまま、自分の足元を眺め続けている。
水流がおさまると、少女はキョロキョロと周りを見渡して周囲に自分の失態を見ている人がいないことを確認し、走ってその場を離れていった。

「ね。なんか可哀そうというか。。。。
 可愛いって思ってしまわない?
 優しく抱きしめて、頭を撫でながら“大丈夫だよ”って言ってあげたくならない?」

少し興奮した様子の彼の言葉は、半分程度しか頭に入ってこなかった。画面に映るコンビニ、そしてその隣りのコインランドリーに見覚えがある。映り込んだ信号の横に設置された標識看板には知った地名が書かれている。
いま彼と過ごすこの部屋からは車で1時間以上はかかるところにある町で、ローカルなこのコンビニは19時で閉店するはず。

そして、画面の中央に映る少女。
ボーダーのこのTシャツはお気に入りだったから洗濯が終われば毎日のように着ていた。
この短パンは体操服だ。

映像をもう一度確認した私は、彼をぎゅっと抱きしめた。

「どうしたの?急に抱き着いちゃって?興奮した?」

「・・優しく抱きしめてくれるんでしょ?」

数秒間固まった彼だったが、私が出身地である町の名前を告げると、彼も抱きしめ返してくれた。

最初に動画を見た時、あの時のことが一気にフラッシュバックした。
長年閉じ込めていた、思い出したくない嫌な記憶。
あのとき、私は誰にも見られていないと思っていた。
だが、画面に映っているのは間違いなく8歳のころの私だった。
いったい誰が撮影していたのか?とも思った。
だがそれ以上に、彼がこの動画を見つけたこと、そしてこの動画がきっかけで、彼自身が自分の性癖に気づいたこと、そして、今日、私とこの動画を共有してくれたことに強い運命を感じた。

「ホントに・・・?」

「・・・恥ずかしいけど、私だよ、この子」

私たちはそのまま、この日二度目の時間を過ごした。

彼が私のことを好きになってくれたのは偶然だとは思えなくなった。
彼は小学生だったころの私の姿にすでに心を奪われていた。
そして私も、彼の趣味をすんなりと受け入れることができた。
私たちが将来をともにするのは必然であり、運命と思わざるを得なかった。

間もなく彼との晴れの日を迎える。
彼と私たちの間にあった運命を、みんなに祝福してもらえる日が来ることに心が弾んでいる。
蓋をしていた嫌な記憶は、幸せを得る引き金になった。

あの日、おもらしをした8歳の自分に感謝していた。

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