田舎の慣習

パンチラ(単発)小説

11月某日。
他の人達からすれば何気ない日々の1日に過ぎないだろうが、僕は死ぬほど緊張していた。
先週のことだった。

「拓也くんも、おいでよ」

と声をかけてくれたのは塔子さんだった。
塔子さんと僕は特段、仲がいいわけではなかった。クラスでのグループ活動の際に喋ったことがあるくらいで、それ以外に遊んだことなどはない。
そんな塔子さんの隣りには慌てたような、でもどこか照れているようにも見える美鈴さんがいる。
こうして僕は美鈴さんの誕生日会に呼ばれることになった。

憧れの美鈴さんは、少し小さな体だが、若いころの渡辺麻友のように可愛らしい見た目をしている。
中学の制服はセーラー服だが、常々アイドルが着るようなブレザーやニットのスクールコスチュームをして欲しいと思ってしまうくらいだ。
そんな美鈴さんに誰にも知られないように恋心を持っていた。

緊張して迎えた誕生日会は美鈴さんの自宅で開かれた。美鈴さんの家は住宅地から学校を挟んだ反対側の山の麓にあった。周囲を田んぼや畑に囲まれている、昔ながらといった雰囲気の家。一番のご近所さん宅とは50メートルくらい離れている。

アイドルのような空気をもつ美鈴さんなので、周囲を畑や山に囲まれた田舎暮らしだったのは意外だった。

リビングには男女3名ずつほどが集まるこじんまりとした会ではあったが、日ごろから一緒に過ごす時間の長い仲間を中心とする和気あいあいとした空気で会は進行した。

この中になぜ僕が読んでもらえたのだろう。
仲が悪いわけではない。
が、先に述べたように特別に仲が良いわけではない。
話をフラれたら話すし、僕も空気を壊さないようにその場に合わせてはいる。それくらいのことはできるが、なぜ・・・・。

そんなことを思いながら、トイレを借りてリビングに戻ろうとした。

ふと、玄関の扉が視線に入った。

入室後から、ひとつ気になっていることがあった。
・・・田舎・・・だな。と。

「みんな、今日は周りに何にもないところに来てくれてありがとうね」

帰りがけにみんなにお礼の言葉と愛くるしい笑顔を振りまいてくれる美鈴さん。緊張してあまりおしゃべりができなかったが、一緒の空間に居れたことだけでも僕は幸せだった。

玄関で靴を履いて扉をでる。みんなでわいわいと余韻に浸りながら住宅地の方に向かう。

「拓也くん、楽しかった?」

塔子さんからの急な話題に驚いた。
小さくうなずくと、塔子さんが続ける。

「そっか。拓也くんが楽しかったんなら、美鈴も喜んでると思うよ。美鈴のことよろしくね」

塔子さんの言葉を聞いていた他の子たちがニヤニヤしていた。

「おはよー」

誕生日会の翌日。
登校して間もない僕の背中をポンっと叩きながら向けられた突然の声に驚いた。声の主は美鈴さんだった。

「昨日はありがとうね」

そういって向けてくれた笑顔は素敵だった。

美鈴さんの誕生日会から3日後。
僕は体調を崩して学校を休んでいた。
母親からはインフルエンザではないかと疑われたが、内科の先生はただの風邪だと診断してくれた。

その診断を聞いた母は、午後から仕事に向かった。病院でもらった薬が効いてきたのか。
起きた時にはしんどかったのがラクになってきた。外の空気が吸いたくなり、ジャージ姿で外に出る。普段ならば学校で授業を受けている時間。こんな時間に外出することに背徳感を覚える。どこかワクワクというか、ドキドキしていた。

少しだけ遠出したくなった僕は、そのまま山の方に向かった。
そう言えば・・・
数日前に見た景色の奥に、これもまた数日前に見た建物がある。
敷地の外から少し中を覗き込んでみると、数日前に停まっていた自家用車と軽トラが無くなっていた。

ダメだ。
思いついても、行動に移してはいけない。
そう思っているが、その場から離れることが躊躇される。
数日前に軽トラが止まっていたスペースの横に物干し竿がある。
少し遠目にはなるが、それらしきものが干してあるようにも思える。

ダメだ・・・・ダメだ・・・・ダメだ・・・・

自分の理性が負けたのは、さっきまでの熱のせいだろうか。キョロキョロと周囲を見て誰も見ていないことを確認した僕は

小走りに物干しざおの前に向かっていた。

物干しざおにかけられたピンチハンガーには、靴下やハンカチなどが洗濯ばさみに止められている。

そして同じ場所に紫のツルツルした素材のパンツと、綿のやわらかいグレーのパンツが干されていた。

おそらくツルツルした方のパンツはお母さんの物だろう。

そして、グレーの方が・・・・美鈴さんのもの・・・・

美鈴さんは一人っ子だ。
どちらが中学生らしいパンツかと考えれば明確な答えが出る。

美鈴さんの愛用するパンツはグレー・・・・

風邪で体力はないはずなのに、股間に血が集まっていく。

その生乾きのグレーの下着を僕はスマホのカメラに収めた。

・・・・もしかして・・・・

もう一度周囲を確認した僕は、玄関の前に向かった。玄関の扉に手をかけ、ゆっくりと動かす。

思った通りだった。
3日前にも気になっていた。
住宅地から離れ、周囲に建物がない美鈴さんの家では、カギをかける習慣がなかった。
そして、いま、この家の中には誰もいなかった。念のため自分の靴を手に持ったまま家の中に入る。

1階にある和室に、この家に住む家族全員の畳まれた洗濯物が置いてあった。昨日洗濯され、タンスにしまわれる前の洗濯物と思われる。

中学の体操服が積んである服の山は、きっと美鈴さんのものだ。
その一番上には、薄いピンクの綿のパンツがあった。
外でグレーのパンツを撮影したように、スマホカメラのピントをピンクのパンツに合わせた。

続いて2階に移動した。
階段のすぐ隣の部屋の扉は空いていて、可愛いキャラクターグッズや人気のKーPOPアイドルの写真が飾ってあるのが見える。勉強机には僕が使っているものと同じ教科書が並んでいた。

僕の視線は、机の隣りにあるタンスを捉えていた。

4段ある引き出しを上から順に空ける。

1段目にはシャツやパーカーが入っていた。

2段目にはジーンズやスカートが入っていた。

3段目は・・・僕にとってお花畑だった。

白の無地のパンツもあれば、同じ白でも黒の水玉がいくつも浮かんでいるものもある。

水色のパンツも無地だが、ふちだけはピンクだった。

黒い生地のパンツは白いアルファベットの文字で何かしらの言葉が書かれていて、黄色のパンツは広げてみるとヒヨコがバックプリントされている。

引き出しの奥の方には、最近は履いていないと推測されるしわくちゃになった塊があった。

これらも1枚1枚丁寧に広げていくと、小さい子が履くようなモコモコしたパンツであったり、可愛いキャラクターがプリントされたものばかりだった。

美鈴さんがこれまでに履いてきた歴代のパンツたちがすべてそろっているのではないかと思われるほど、幼いパンツや、サイズの小さなパンツも多く残っていた。

美鈴さんの家を後にした僕は、自分の部屋に戻っていた。
家を出る前、薬を飲む前よりも、熱は高くなっていたかもしれない。
興奮は覚めることが無かった。

翌朝。
復調した僕は元気に登校した。

「おはよう」

「・・・おはよう」

4日前に僕らに明るい笑顔を振りまいてくれたアイドルには元気が無いようだった。

彼女はいま、どうしているのだろう。
もしかしたらノーパンかもしれない。

美鈴さんの家に、彼女のパンツは1枚も残っていないのだから。

後々知ったことだが、美鈴さんは僕のことが好きだったようだ。
だが、下着泥棒事件がきっかけで男性不信となったようだ。
犯人は不明とのことだが、自分のことを性的な目で見られることに恐怖を覚えるようになった。
結局僕と美鈴さんがお付き合いすることはなかった。

彼女との思い出は、僕の部屋の押し入れに18枚の布に濃縮されている。

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