プライベート空間

パンチラ(単発)小説

「・・・少しだけなら・・・・」

中学校の制服を着たまま僕の部屋を訪ねた和葉は、恥ずかしそうに制服のスカートをたくし上げる。
その下から見えてきたのは、朱色のハーフパンツ。体育の授業で使っている体操服だ。

「・・・なんか・・・ハーパンなのに、こうして見られると恥ずかしいね・・・」

和葉が照れながら笑う。

「ハーパン・・・じゃなかったら?」

「そんなのもっと恥ずかしいに決まってるじゃん!」

扉の影から“クスクス”と小さな笑い声が聞こえている。
和葉にとって、屈辱的な罰ゲームだった。
クラスの女子の間でなされたゲームに敗れた和葉。
罰ゲームは“男子にスカートの中を見せる”だった。デカい声で盛り上がっていたものだから、教室にいた全員が罰ゲームを把握している。
クラスのみんなが誰に見せつけるのかと密かに注目していたところ、選ばれたのが僕だった。

「やすあき、聞こえてたでしょ?ちょっと隣りの部屋にきて」

和葉に彼氏はいない。
幼馴染で比較的仲の良い僕が呼ばれるのは必然だったのだろう。
僕らのホーム教室の隣りの空き教室で行われた罰ゲーム。
廊下から眺めていたゲームの参加者たちは笑いをこらえるのに必死なようだ。
罰ゲームが終わりを迎える。

「あ~あ。ハーパンじゃないのも見たかったな」

あえて意地悪な質問をぶつけてみた。

「嫌だよ!絶対見せない!誰にも見せたことないんだから!」

僕にそう告げて、和葉は廊下からのぞき込んでいた友人たちと合流した。

絶対見せない・・・か・・・

女の子であれば、男子にパンツを見られたくないのは当然のことだろう。だが、和葉がこれだけはっきりと口にするのには理由がある。

あれは1年前のことだった。
身体の成長が遅めだった僕は、そのころにやっと精通した。
もともとえっちなことに興味がないわけではなかったが、初めて自分を慰めて以降、その快感に取りつかれてしまった。

だから、あの日。
体調がすぐれなかいにも関わらず、自分を慰めてそのまま寝落ちしてしまった。
目が覚めると、そこにはお見舞いに来てくれた和葉がいた。
僕の眠っていたベッドに腰を掛けて、枕元に放置してしまっていた写真を眺めていた。

「ねぇ。これ見て・・・何してたの?」

まずい。

「やすあきの部屋、変な臭いするんだけど。
 お兄ちゃんの部屋でたまに臭う・・・ね」

「・・・・・」

「今日のことは忘れてあげる。
 でも、この写真は没収するからね」

そう告げて和葉は帰っていった。没収された写真は小5のときにクラスで撮影した集合写真だった。
3列に並ぶ生徒たちの最前列。
そこにはキュロット姿で体操座りしている和葉がいる。
和葉の履いていたキュロットは緩く、キュロットと足の間に大きな空間ができていた。
そのため、写真には和葉の笑顔のすぐ下に、白と赤のボーダーのパンツがしっかりと写ってしまっていた。

写真が配布された当時から、和葉はクラスメイト達に

“見ないで”

と連呼していた。
パンツが見られてしまった。
それも一生の形に残るものとなってしまった。
それ以来、和葉はことあるごとにパンチラしないように警戒心を高めるようになっていた。
普段の学校生活から足元には気をつけていて、スカートがその隙間を生み出さないように押さえられる裾は必ず手で押さえながら行動する。
当然、スカートの下には必ず短パンを履き、もし仮にスカートの中が見えても大丈夫なように対処していた。

ここまでガードを固めるほど、当時のパンチラスナップは和葉の中でショックの大きいものだったのだ。
だが、この写真は男子生徒には違う意味でショッキングなものになった。
成長の早い子たち、当時からこの写真で1発・・・2発・・・と言っていた。
そして・・・和葉がせっかくお見舞いに来てくれたというのに、その少し前の時間に僕もこの写真を見て、和葉の紅白のボーダーパンツを見て抜いていた。
部屋の臭いから、和葉が“自分をおかずにした”と認識するのは当然のことだった。
これが決定打となったからだろう。
和葉はさらにガードを固めるようになった。

短パンの下にスパッツを履くようになり、これから先、自分がおかずになることから守るための努力をしていた。

そんな和葉だから・・・・僕は不思議で仕方なかった。

僕と和葉は幼馴染だ。
小さいころからよく一緒に遊んだし、それだけ幼少期から遊んでいればパンチラを拝む機会だって何度もあった。
小5のパンチラスナップ事件以降、和葉はガードが固くなり、日常的にパンツを見ることができなくなっていった。

だが、それは一緒にいるときの話だった。

幼馴染であり・・・同時に、隣人でもある。
ともに一軒家で敷地の垣根を挟んだ2階の部屋を自室としている。
僕の部屋と和葉の部屋はわずか2~3メートルしか離れていない。

僕の部屋の窓際に設置したベッド。
その枕元に覆いかぶさっている分厚いカーテンを少し開けば、カーテンのかかっていない女の子の部屋がすぐ視界に飛び込んでくる。
僕がカーテンをしていたことで和葉は油断していたのか。それともよっぽど自然光が好きなのか。

ガードの固い和葉がカーテンもかけないのは意外なことだが、僕にとっては大変喜ばしいことだった。

あのパンチラスナップが出回って以降、2つ年上のお兄さんにもプライベートを隠したがる和葉は、毎朝その部屋で着替えをするようになった。
だからこそ、パジャマのズボンを脱いだ時に、はじめてどんなパンツを穿いているのか僕に披露するし、そのパンツの上にスパッツを履いてからハーパンを履くことも知っている。

昨日和葉が穿いていたピンクのパンツは、他のパンツよりも一回り大きめなのだろう。そのパンツの時だけはいつも腰の部分でスパッツからパンツがはみ出してしまう。

和葉の小6~中1にかけて愛用していたスポブラたちは、今では立派な形をしたブラジャーに変わっている。

小6の正月に、僕は前年から溜め続けたお年玉を使ってデジカメを購入した。日ごろから風景や虫、鳥、動物も頻繁に撮影しているから、立派な趣味とも言える。

だが、SDカードを差し替えれば、そこにはこれまで約4年間撮り溜めた1000枚を軽く超える和葉のお着替えショットが眠っている。
写真に興味をもつきっかけとなった1枚は没収されてしまったが、

“誰にも見せない”

と言い張り、兄などの身内にすら隠しているその秘密の景色は、僕によって毎日、毎日記録されている。

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