私が通っていた小学校は、田舎の新興住宅地にあった。
隣県にある都市のベッドタウンとなった町は人口が増加し、
ちょうど私が生まれた年に新しい小学校ができた。
そんな町の学校のため、転校生も珍しいことではない。
新興住宅と言うことで、当時は学年が上がるにつれて、
学年の人数も少しずつ増えていく。
小学校入学時には150名程度だった学年人数も、
卒業時には170名ほどまで増えていた。
そんな小学校では3年生・5年生に学年が上がる際にクラス替えが行われる。
学年が上がり、お兄さん・お姉さんになっていくことの自覚を持つことよりも、
誰と同じクラスになるのか。そちらの方が緊張を高まらせる。
小学3年生となった私は、それまで仲の良かった子たちとはクラスが離れ離れになってしまった。
周りには知らない子たちばかり。
クラスになじめるか、新しい友達ができるか不安でいっぱいだ。
また、3年生になり、授業も少しずつ難しくなる。
国語の授業では漢字が増え、算数の授業では文章題が増える。
理科や社会と言った科目も3年生から履修が始まる。
幸い、私は塾などに通わなくても授業の内容を理解できる程度の学力はあった。
特に勉強をした記憶はないが、テストで70点以下を取るようなことはなかった。
クラスメイトの中にはすでに勉強につまずいている子もいる。
ある授業では、「この前の宿題でもこう間違えてたから、ここを気をつけなきゃね」と机間巡回しながら担任の先生がある子に指導をしていた。
ちゃんと宿題をしてるのに成績が芳しくない子もいる。
反面、私のように宿題はしないが点数はとれてしまうという子もいる。
今になって思えば、公立の小学校は、1クラスの中でも出来不出来に大きな差が生じる。
その子たち全員に向けて指導を行う教員という職業は大変な重労働だったことだろう。
学力で言えば、私は上位3分の1には入っていたと思う。
だが、通知表の成績では下位3分の1に位置していたと思う。
先にも述べたが、宿題をしない子だった。
漢字の書き取りなどは毎週必ず決まった宿題なのだが、
期限内に提出したのは片手の指で足りるほどの回数だった。
そのため、内申を含んだ総合成績は非常に悪かった。
授業や宿題にはまじめにとりかかるけど、勉強は苦手な子
勉強はできるけど不真面目な子
このどちらに対しても強く嫌悪感を抱く女の子がいた。
ひとみという女の子。
学年の女子の中で一番背が高かった彼女は、6年生のお兄ちゃんがいる。
このお兄ちゃんも背が高く、運動神経が良いことで有名で、
ひとみも運動が得意なほうだった。
それでいて、通っている学習塾の中でも成績が一番良い子だとも聞いた。
確かに、学校で実施するテストも、返却時にひとみは堂々と自席まで持ち帰る。
点数はもちろんいつも満点だ。
ひとみは、授業で先生からの指名を受けて解答できなかった子には
「なんであんな問題もわかんないかなー」
と言い、
私のような子には
「宿題やってこないとかありえない」
など、とにかく突っかかってくる。
ひとみは思ったことをすぐに口にする癖がある。
私も含めて、ムッとした男子はひとみに言い返す。
頑張ってるのに成績が良くない子は言い返す権利はあるかもしれない。
私のようにただ不真面目を注意された子については、ひとみが全面的に正しい。
だが、それでも反発してしまう。
そして、ひとみとの喧嘩が勃発する。
もう一度言うが、ひとみは背が高く、運動神経も良い。
小学生の間は男子より女子の方が成長が早く、
学年の女子で一番背が高いといことは、
男子を含めた全生徒の中で一番背が高いということとニアリーイコールだ。
ひとみとの喧嘩は口だけではかなわず、途中から手がでかける。
しかし
”女の子相手”
と一瞬こちらが踏みとどまる。
だが、ひとみは躊躇しない。
そこからはひとみからの殴る蹴るの猛攻を受けることになる。
友達ができるか不安だった私だが、友達よりもさきに喧嘩相手が出来てしまった。
勉強もでき、生活態度だって真面目な男の子も当然存在する。
だが、当時の小3男子なんて、ほとんどは勉強しないか不真面目のどっちかだ。
気がつけば、ひとみはクラスのほとんどの男子と喧嘩を経験していた。
そのため、いつしかクラスの男子はともに仲間意識を持つようになっていた。
“男勝り”という言葉を忠実に体現する子の存在によって、多くの友達ができていた。
人の性格はどのように形成されるのだろうか。
大学生の頃、教養課程で軽く心理学をかじったが、正直覚えていない。
だが、なんとなくだが、周囲の環境と経験から形成されるというのは
パブロフの犬を例に聞いたような気がする。
だが、一言で“経験”といっても、度合いは人それぞれだろう。
幼いころからの様々な経験によって、徐々にかたちをなしていく場合もあれば、
ある出来事をきっかけにそれまでとは180°ないし90°一気に変わることもある。
クラスの男子の中で、血の気の多い子がいる。
ゆういちは沸点が低く、一度癇癪を起すと手が付けられない。
叱っていた先生に向けて椅子を頭の上に振り上げた時は、
クラスの全員が慌てたものだ。
ある秋の日。
ゆういちとひとみの喧嘩がはじまった。
きっかけはわからないが、教室中のすべての机を後方にまとめていた掃除の時間。
広々と空間ができた前方で、ふたりが大きな声で言い合いをしている。
ひとみによる口撃。
ゆういちに30のダメージ。
ゆういちの叫び声。
ひとみには効果が無いようだ。
ひとみのはたく。
ゆういちに20のダメージ。
そして、HP残量が半分を超え、始まってしまった。
ゆういちの癇癪が。
教室の空気が変わる。
みんなが一瞬にして“マズイ”と察知する。
ひとみもこのことに気づき、それまでとは一転して、
ゆういちをなだめようとする。
聞く耳などなく、ひとみのパーカーを引っ張り、振り回すゆういち。
戦意のないひとみはゆういちに振り回せる。
1周・・・2周
振り回されたひとみのパーカーがゆういちの手から離れる。
そのまま盛大に、うつぶせに転倒してしまう。
ひとみは打ち所が悪かったのか、うつぶせから立ち上がることはできない。
時間にして10数秒ほどか。
ゆういちが少し落ち着き、安全が確認できたところで、
クラスの女子数人がひとみに駆け寄る。
「大丈夫?」
「どこか痛い?」
ひとみに言葉をかけながら、
一番最初に駆け寄った女の子が、転んだ時からずっと捲れっぱなしだったスカートを正した。
ひとみはこの10数秒間。
男女問わずクラスの全生徒にパンツを丸出しにしていた。
ゆういちに振り回されるひとみ。
盛大に転ぶひとみ。
転倒の勢いに抗えなかった制服のスカート。
ひとみのお尻を覆う布。
その布は一切隠される部分がなく、お尻部分の全面を露わにする。
成績優秀で、宿題などの決め事も必ず守る優等生。
それでいて男勝りでけんかっ早い。
そんなひとみのお尻は
真っ白なパンツに浮かぶ
キキとララによって守られていた。
まさかの衝撃だった。男勝りで気に入らないことは言葉にする。
そして喧嘩っ早く、向かってくる男子を返りうちにする。
そんな子が、まさかのキャラクターがプリントされたパンツを履いていた。
ひとみの性格とはにつかわない、とても可愛らしいパンツ。
3年生ともなれば、キャラクターものは恥ずかしいという抵抗を覚える子も多い。
“そんな子供っぽいのは嫌だ”と感じる年頃だ。
ひとみは他の子よりも成長が早く、強く、そして頭が良い。
だが、ひとみの愛用するパンツは、だれよりも“おこさま”だったのだ。
教室内では小声での会話があちこちから聞こえる。
ゆういちを咎める声。
先生に言いに行くか悩んでいる声。
それとは別に
「男みたいなくせにキキララかよ」
という男子の声。
「ひとみちゃんって子どもみたいなの履くんだね。意外~」
という女子の声。
どこからともなく聞こえるその会話は、おそらくひとみの耳にも聞こえていただろう。
人の性格は何がきっかけで変わるかわからないものだ。
この喧嘩以降、ひとみは口撃はするものの手は出さなくなり、
次第にだが、売り言葉がなくなり、強く反論することもなくなった。
ゆういちとの喧嘩を経て、ひとみは行動の前に一呼吸置くようになり、
一歩・二歩・・・大人への階段をのぼり、
おしとやかな優等生へと変貌をとげていた。
3学期の終業式後、教室内で担任が総括を述べる。
「みんなはこの1年間で成長しました。喧嘩も少なくなり、暴力以外の方法で解決できるようになりました。そんな自分たちの成長を自分で褒めてあげましょう」
終業式前日のこと。
この日は大掃除を行う。
校舎内のとある渡り廊下のような場所が、私とひとみを含めた数人の掃除担当エリアだった。
風の強い日で、ほうきで掃いたごみがすぐに飛んでいく。
宿題に対しては不真面目だが、私は掃除はちゃんとやっていた。
掃除時間終了まであと3分。
「風で飛んで意味ないから、もういいじゃーん」
そう言いながら、ひかるくんがほかの子たちと一緒に教室に戻っていく。
私とひとみだけが残された。
ひとみと私はそれぞれ背を向けた状態でお互いが集めたごみをまとめる。
わずかだがまとまったゴミを、しゃがんで塵取りに移し、私は立ち上がる。
立ち上がる際、私の持っていたほうきの柄が何かに引っかかり、
慌てて後ろを振り返った。
ひとみのスカートは、ほうきの柄でわずかに捲れていた。
その捲れあがった裾を、今度は風が後押しする。
ひとみのスカートは腰までめくり上がる。
真っ白な生地のパンツ。
ひとみによる2度目のパンモロだ。
そして、今回もただ白いだけではなかった。
めくれ上がるスカートから、
白い生地にプリントされたケロッピーと目が合った。
前はキキララ、今日はケロッピー。
サンリオが好きなんだろう。
ひとみは自分のスカートがめくりあがったことに気づいていないのか、
そのまま掃除道具を片付けて教室に戻った。
ひとみの性格はこの1年間で、グッと大人に近づいた。
だが、
パンツだけは今でも”おこさま”であることを、私は知っていた。
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