特大ブーメラン

おもらし小説

※この物語は、以下の続編となります。

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「葵ぃ~、ここ写させて」

「だめ!宿題でしょ、自分でやらないと・・・」

「はぁ?そんなこと言うの?おもらししたくせに」

「ちょ!?それは・・・」

葵ちゃんはそこで言葉が詰まる。

あの日、登校した教室の黒板にはすでに大きな写真が貼ってあった。クラスメイトの誰もがその写真に驚愕した。
幼稚な男子生徒の中には、その写真を見て馬鹿にしちゃう子もいたけど、それでも半信半疑だった。

でも、その後、その写真を目の前にして、葵ちゃんは写真と同じことをしてしまった。
葵ちゃんはあの日から変わってしまった。

本人はそれまで通りに振る舞おうとしてるようだが、亜美ちゃんに歯向かえなくなってしまった。

亜美ちゃんのわがままには、正直クラスのみんなが辟易としていた。でも、わがままなうえに気が強い亜美ちゃんに強く出れる子はいなかった。

そんな亜美ちゃんが唯一敵わなかったのが葵ちゃんだったのに。。。

「最初から大人しく見せてれば嫌なこと思い出さなくて良かったのにねぇ(笑)」

勝ち誇ったような顔をする亜美ちゃんには、クラス中から飛んでくるイタイ視線は届いていないようだった。

「葵、放課後・・・ちょっといいか?」

目に涙を溜めた葵ちゃんに、小さな声がかけられた。

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金曜日の5限目。
全校集会の時間だった。

1年生のまだ幼い子たちからもうすぐ中学生となる私たちまで全生徒が一堂に会する。

だからといって特に何もない。
何を言ってるかわからない校長先生の長い話を、ただ聞いているだけだ。
みんなが退屈そうに過ごす時間に、ひとり落ち着きのない少女がいた。

私の目の前に座る女の子は、カーキーのショーパンに覆われたお尻を落ち着かせることなくクネクネと動かしつづけている。

校長先生の長い話が少し途切れた。

同時に、目の前の少女がピタッと動きを止めた。

しかし、すぐにまた体を揺らす。
いや、揺らすという表現とは違う。
小刻みに震えている。

この話を目にしている人も、全力でこぶしを握り締めてみて欲しい。その力を逃さないように全力で握り続けていると、自然に腕が小刻みにプルプルと振動してしまうことだろう。

少女はそれほどまでに全力で力を入れて、何かに耐えている。
まぁ、何に耐えているのかは分かっているが。

「全員、起立」

長かった校長先生の話が終わり、進行役の先生が号令をかける。
少女は他の子よりもワンテンポ・ツーテンポ遅れ、そしてゆっくりと立ち上がった。
急にうごけば、溢れてしまうかもという恐怖が彼女を襲っているはずだ。

「気をつけ・・・・礼」

さぁ、これで全校集会は終わりだ。
少女にとってみれば、やっと訪れた開放の知らせだろう。

だが・・・

「6年生は引き続き学年集会になります。
 6年生、座ってください。
 1年から5年生は教室に戻ってください」

私たちが待っていたのはこの号令だった。

先生の声に合わせ、クラスの全員が一斉に床にばっとしゃがむ。
クラスの列の中で立っているのは例の少女だけ。
その様子に少女は驚いてしまった。

そして、これが引き金となってしまった。

中腰となった少女は限界を迎えた。

プルプルと痙攣するふともも。

そのふとももとカーキーのショーパンの隙間から、勢いよく水が流れていく。

いや、もうハッキリと表現しよう。

彼女の股間から、おしっこがあふれてきた。

少女のおもらしが始まった。

一斉にしゃがみ込んだ集団のその中央。

突然の集団パフォーマンスに他のクラスの子たちも驚いて注目する。
その視線は6年生だけでとどまることなく、体育館から立ち去ろうとした下級生たちも“なにごとか?”と思い、興味の視線となる。

その多くの視線が集団パフォーマンスの中央にいる中腰の少女に集まっている。
少女は中腰の体勢のまま身動きをとることができず、そのままの姿勢で自分の足元におしっこの水たまりを広げていく。

そして、私に役割が回ってきた。

「ちょっと、亜美ちゃん、おしっこかかってるんだけど!」

体育館中に響き渡るほどの大きな声で私は叫んだ。

この学校に通う全校生徒に、そして多くの下級生に、いまおしっこをおもらししている6年生は“亜美”っていう子だと伝えるために。

「え!?」

「なに?」

「おもらし?」

「6年生が?」

そんな声が体育館中から聞こえてくる。

目の前の少女はそのカーキーのショーパンを濃い色に染めることしかできなかった。

「橘!?」

全員が一斉にしゃがみ込んだ列に、あわてた様子の担任の先生が飛び込んできた。

担任が彼女を呼んだ声は私たちの思惑通り体育館中に響き渡るほど大きい。私の発言と合わさって、“橘 亜美”という6年生がおもらしをしたことが体育館に居るすべての人間が知ることとなった。

先生に左腕を引っ張られる少女は天を仰ぎ、口を大きく開けて泣いていた。

その日の夕方、私が訪れた歯医者には少し重たい空気が立ち込めていた。

受付に座っているおばさんは苛立っているようだった。

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『大スクープ!!
 全校集会でおしっこを漏らした犯人は?

 10月20日
 全校集会を終えたのとほぼ同時刻に
 6年3組の橘 亜美(たちばなあみ)は、
 おしっこを我慢することができず、
 全校生徒の集まる体育館でお漏らしした。
 みなさんは“たちばな歯科医院”を
 訪ねたことはあるだろうか?
 名字からおわかりのとおり、橘 亜美は 
 “たちばな歯科医院” 院長の娘だ。

 そんなお嬢様が、まさか6年生にもなって
 おしっこが我慢できないとは。

 この日の集会は、気温も低く、
 底冷えするような寒さがあった。
 しかし、1年生・2年生のなかにも
 お漏らしをする子なんていなかった。
 それなのに、小学校の卒業、ひいては
 中学入学を目前に控えた6年生が
 こんな情けない失敗をしてしまうとは。

 普段から先生の言うことも聞かない
 精神の幼い子だったが、まさか
 体も幼稚園児と同じように幼かったとは」

上の文言は、集会の翌日、学校中のすべての教室に書かれていた言葉だ。同時に、黒板には亜美の顔写真が貼ってある。
おもらしをしてるところではない。
普段の葵を写した写真。
学校内の廊下やグランドですれ違った際に
“あの人がおもらしした人だ”と分かってもらうためには、おもらしして泣いている顔よりも普段の顔の方が効果的だからだ。

こうして、亜美は全校生徒に“おもらしした6年生”として認知された。

もちろん、これは改めて集会が行われるほどの大問題となった。
だが、犯人は個人ではない。
6年3組の全員で協力したことだったからだ。橘家からの責任追及にも負けなかった。

葵ちゃんが自ら受けた亜美からの行為を涙ながらに告白してくれた。
葵ちゃんがおもらしをしたことは橘家のみなさんも当然ご存知のこと。それは自分たちの目の前で起きたことだったからだ。

「私の失敗は皆様にご迷惑をおかけしましたが、それは治療に関係のないことでした。治療に関係ないことも含め、患者のプライバシーを娘さんが侵害してることは、個人情報を取り扱う歯科医院としてどのようにお考えですか?」

葵ちゃんの言葉に、亜美のお母さんは何も言い返せなくなっていた。

さて・・・そもそも、なぜ亜美はおもらしという大失態をするに至ったのか。その点が疑問だと感じる人も少なくはないだろう。

なぁに。簡単なこと。

その日は朝からずっと亜美にトイレに行かせなかっただけだ。
休み時間のたびに話しかけたり、必要以上に持ち上げて気持ち良くお喋りしてもらったり・・・
昼休みには亜美が想いを寄せる村上くんと二人きりで過ごしてもらったり・・・
昼休みを迎えるころには結構トイレに行きたかったと思うんだけど、そこは村上君が“もうすぐ告白する”的な空気をうまいこと出し続けてくれていた。
告白されることなんてありえない。

この作戦の発案者は村上君だ。

亜美の言動に一番ストレスを感じていたのは村上君だった。村上君は我慢できなかった。

大好きな女の子を傷つける人間を。

半年後。

私たちが進学した中学からの帰路には、手を繋いで歩く葵ちゃんと村上君の姿があった。

私たちもその姿を見ながら「ホントにお似合いだよね」など喋り、ふたりの邪魔にならない程度に距離をとって歩く。

村上君が歩みを止めた。

彼の視線は、目の前のたちばな歯科医院の2階の方。あれからしばらくして、亜美は不登校になった。進学した中学にはまだ一度も登校していない。

村上くんの視線の先を私たちも見ていた。

そこには、今日も取り込まれていないおねしょ布団が干してあった。

亜美が引きこもりになった理由、それは、おねしょ癖がついてしまったことで、外出時に漏らしてしまうことが怖くなったからだ。

私たちが据えたお灸は、とても強力なものになってしまった。

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